私と彼が出会ったのはお互い40歳を過ぎていました。
彼は東京、私は新潟に住んでいて付き合い始めのころは遠距離恋愛をしていたのです。
これは神奈川の湘南や鎌倉周辺でデートした時の話で彼が「ねぇ俺の後ろ姿と大仏の写真を撮って」と大仏の前に立って言い出しました。私はいまいち気乗りしなかったものの、嫌だと言うのもおかしいと思って背を向けた彼の向こうに大仏が写る風景をスマホで撮ったのでした。
その後ですぐ「ありがとう」とニコニコしながら私のスマホをのぞき込んだ彼は「俺、ハゲてる?ハゲてるよね?」って言いました。
私は「いやぁ、あぁ光の加減かな?う~ん」とあいまいなことしか口にできなかったです。
私は出会った時から彼がハゲていることはもちろんわかっていた一方、傷つけると思って口にできずにいました。
地肌が透けて見えた彼の頭頂部は短髪で当時は直径5cmほどだったものの、今は10cmほどで産毛のようになっているのでした。
私はもちろん彼も気づいていると思っていた一方、この反応はどうもそうではないように見えます。
それから彼は後姿を撮ってと言わなくなったものの、なんて他人のハゲを気にしている場合ではないでしょう。
互いに50歳を超えた今、なんと私もハゲてきました。
女性の私の場合は頭頂部が彼のような状態になるのではなく、額から左右の髪のつけ根部分が後退するようにハゲてきたんです。なんか正面から見ると額の上に猫耳を描いたみたいに地肌が見えます。
いわゆるM字ハゲと言うのでしょうか。
私は若いころから髪の毛が細くてコシがなくてペタッとしていた一方、ここまで薄くなったことありません。
2人で鏡の前に立った時、映っている彼に向って「ねえ?私ここ、ハゲてるよね?」と左右の髪の毛が薄くなった部分を指して言ったのでした。
すると彼は「ホントだ、ハゲてる」と正直に言います。
ショック…事実だけど、そんな正直に言わなくてもいいと思うのです。
もしかして最近、激やせしたせいで頭皮まで栄養が行きわたらなかったとか原因を考えた私は悩みました。
この前、美容院で美容師さんに私のハゲの話をしたのでした。
するとその美容師さんに言われたことが「おでこの髪の毛の付け根部分、左右が産毛状態になり、なにより自分で気になっていることが大変」とわかってはいたけど、私も産毛か…産毛夫婦だなんて苦笑しました。
私の仕事が在宅でのパソコン作業と聞き、美容師さんは「すごい肩凝っているのは仕事のせいで頭皮が硬くなり、血行が悪くなるのだ。」と言ったのです。そしてカットの間、なぜハゲるか講義してくれました。
そんなこんなで美容院から帰った私のバックの中に育毛剤が入っていたのでした。
しっかりこの育毛剤を気になる箇所につけ、美容師さんに教えてもらった頭皮マッサージをすることで太い毛が生えると聞きます。
私は帰宅して自慢げに「育毛剤使ってもいいよ」と掲げたものの、彼は渋い顔で「スカルプケアとかいろいろ出てるけど、そんなの実際に効くかわかんないでしょ?それいくら?ってか1回買っちゃったら続けないとでしょ?」と言ったのです。
確かに1本¥6000は高くて2,3か月もつらしいけど、そうか…と私は少ししょげました。
そんな私を見て彼は「俺は別にそういうの使おうと思わないけど、まぁいいんじゃないの?やっぱり女性は外見に気を遣うのは大事だね」とフォローしてくれたのでした。
確かにケアしても必ず毛が生えるとは限らず、エンドレスで育毛剤を買い続ける必要があります。
使い方を教えてくれた美容師さんに「気になる箇所に育毛剤をつけて地肌のマッサージを毎日必ずやって」と言われ、考えたら大変と一瞬思ったのです。
ただ私は信じてこのケアをやり続けることにし、せっかく6000出して買って毛が生えるかもしれません。
自然のままの自分を受け入れる彼とお金をかけてケアする私、さて互いに60歳を過ぎたころに私たちの頭髪はどうなっているでしょう。
フロントエンドエンジニア ポートフォリオ